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『ほら、泣かないで。神様が悲しむよ? 愛しい者が泣いているのは凄く辛い事だから。ほら泣かないで笑いましょう? そうすれば神様も笑ってくれるから……』
いつもの様に暮らしていた。誰もが明日を疑うなんて事は……多分なかったのだろう。どこにでもある特色の無い村。自慢出来る事と言ったら長閑な田園風景と、特産物のぎっしりと実の詰まった、西瓜ぐらいな物だ。
丁度仕事を終え、家に帰る途中の道、黄昏刻と言うのだろう。真っ赤な、真っ赤な夕日に照らし出された道は、恐ろしく美しかったのを憶えている。
気が付けば辺り一面砂、砂、砂。物が、者が、モノが赤い砂に変わる。人がサラサラと崩れ、建物が崩れる。家族だったモノや、友人だったモノが砂に変わる。家だったモノが、車だったモノが砂に変る。人々は悲鳴をあげ逃げ惑い、砂に変わっていった。
村が砂に変わり、飲み込まれ、無くなった。自分のいた高台から見下ろす村は赤かった。教会の屋根が砂から突き出し、その屋根に吊るされている赤銅色の鐘が、リゴーン、リゴーンと哀しげに鳴っていた。
呆然とする者、泣き叫ぶ者、怒鳴り合う者。悲鳴と怒号に日常が掻き消される。
そして、自分だけが残された。
常識的に考えれば、岩やレンガならともかく、人や木が砂に変わる訳はない。岩やレンガにしろ一瞬にして、何のエネルギーも加えられぬまま砂に変わることなどありはしない。
馬鹿馬鹿し過ぎて現実感が湧かない。三流のファンタジー小説でもあるまいし、「世界に一人だけ取り残される」なんて事があっていい訳がない。科学的にお偉い学者さんか誰かが説明をして欲しい。自分が変わらなかった理由。他のモノが変わってしまった理由。
その誰かが居ないので、とりあえず自分で考えてみる。他力本願はあまりよくない。 |
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